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私が、土壁ワークショップをする理由。

更新日:2021年4月4日

竹を切って割って、10000個も節を取って筋肉痛になるわ、

竹を縄で編んで、ボードなら1日のところ3週間も掛かるわ、

泥を家に塗ったくって、自分も泥だらけになるわ、

効率考えたら笑われてしまうのかもしれないけれど、

なんだか面白いし、人生変わっちゃうかも。


そんな「木と土と竹の家」つくってます。





ソマミチのイベントを担当している堀越です。

今「木と土と竹の家」として、安曇野に自宅をつくっています。


京都で町家の改修に関わった20年近く前から、

家を建てるならこの形でと思っていたのですが、

なにぶん寄り道の多い人生でして、

自分で全体を設計するのは初めての半人前建築士です。


釘を使わない構造には、大工さんはじめ職人さんの技術が活かされ、

土壁に関わる部分はワークショップとして、一般のみなさんにも関わっていただく。

どうしてこの建て方で、どうしてワークショップをするのか。

少しお話させていただければと思います。



まず「木と土と竹の家」とは。


一般的には「木組み土壁の家」と呼ばれるつくり方です。構造は「木組み」と呼ばれ、 大工さんが木と木の接合部を手刻みで加工し、釘を使わず組み立てます。壁は土壁。竹を割ってフェンス状の下地(竹小舞)をつくり、その上に土を何回かに分けて塗っていきます。伝統構法と呼ばれる範疇に入りますが、基礎はベタ基礎、屋根はガルバ。断熱材も入ってますし、いいとこどりのハイブリッドといったところでしょうか。


この「木と土と竹の家」の特徴は、ざっくりまとめると以下の3点。


ひとつめの特徴は「自然素材でできている」ということ。主な素材は木と土と竹。木も竹も切って活用していく必要がある素材です。木と竹は最終的には土に還り、土壁の土は練れば再利用できるので、解体時の廃棄物も少なくて済みます。

これらの自然素材は、その調湿性と蓄熱性で、緩やかに室内の空気を整えてくれます。深呼吸したくなるような室内の空気は、体験してもらわないと説明しにくいのですが。



ふたつめの特徴は、「伝統的な技がいきている」ということ。大工さんが、木一本一本の癖を見ながら組む構造は、柔らかく地震にも耐えます。左官屋さんが土やら藁やら砂やらでつくる壁は、多種多様な仕上がり。日本の風土に合っているし、何より美しい。日本の伝統建築の技術がユネスコの世界文化遺産に決まりましたが、それは何も寺社仏閣だけのものではなくて、普段のくらしの近くにあったものなのです。


3つめの特徴は、「みんなでつくることができる」ということ。

竹の下地「竹小舞」づくりや、土壁の一層目「荒壁」塗りは、昔は農閑期の共同作業で、結(ゆい)と呼ばれていました。職人さんの高い技術と素人DIYの楽しさの融合。何よりもつくるプロセスをみんなで楽しめるというのが、土壁の最大の面白さだと思っています。

(↑この写真は2017年のワークショップのものです)


この3つめが、なんでワークショップをやるのか?の理由です。


作業をもう少し詳しく追ってみます。

まず、11月に近くの荒れた山から竹を切ってきます。その竹を割って節を取ります。節の数はおよそ10,000個。腕が鍛えられます。その竹を編んでフェンス状の下地「竹小舞(たけこまい)」をつくります。竹を一本一本縄で固定していくと、家全体が竹かごのような状態になり、そこに土を塗っていきます。アイロンのような「左官コテ」で土を塗ると、竹の裏側にむにゅっと土が出てきます。ぐっと押し付けないと竹小舞にくっつかないから、それはまるで一日がかりの筋トレ。



どの工程も、慣れてくると小さなコツがつかめてきます。それがきっと、体を使ってものづくりをする楽しさなのでしょう。手を使って、体を使って、つくった実感が生まれます。人は、頭だけで生きてるものではない。手や足や筋肉や、いろんな部分が融合して一つの生命体として生きている。そんな、体験しないと分からない気づき、五感を使う面白さが、土壁にはあります。体験を通して考え方が変わる、生き方も変わっちゃう、なんてこともあるかもしれません。




また、一緒に作業をすると、他の人と話が弾むんですよね。みんなそれぞれ作業をしながら、同じゴールに向かっている。全然強制はされていないけれど、なんだかゆるい一体感が生まれる。一日作業したあと、空は夕暮れ。汗かいて何かをつくった充実感。すでに沸き起こる筋肉痛の予感。昔ながらの古い共同体はちょっと重たいけれど、作業を通して生まれるゆるいつながりは、今また新しく面白がってもらえるのではないかと思っています。


そしてそのコミュニティは、時間軸と空間軸を超えてつながっている。

時間軸で見れば、100年前の人が植えた木を使わせてもらって、今家を建てる。それを100年後の若者が、素敵にリノベして使ってくれるかもしれない。空間軸で見れば、一軒の家に、里山からもらってきた竹と、森からもらってきた木々が使われている。そんな縦軸と横軸のコミュニティ、つながりの中にいるんだと、今感じることができています。



効率や確かさを求めて行き詰っているのが今という時代だとすれば、混ぜて、塗って、乾かすという、標準化できない不確かなものの中に、ものの見方を変えるきっかけがあるのかもしれません。


長くなりました。

ワークショップ、ぜひお越しください。



ーーー

ソマミチスペシャル情報:

構造材の一部は荒山林業さんの100年ヒノキ。詳しい方ほど「え、荒山さんのとこヒノキあるの?」と聞くレア材を、家族で切りに行かせてもらって、2年間天然乾燥しました。全体の8割ほどは木曽ひのきで、こちらは(残念ながら)乾燥が掛かっているのですが、色つやが違います。作業がてら、荒山ひのき探し、しにきてください。



竹小舞ワークショップ情報:

この文章を書くのに手間取っていたら、4/3(土)は定員に、4/5(月)もあと2名となりました。その後も2・3週間かけて小舞かきしていますので、そちらのご参加もお待ちしています。詳しくは以下のリンクまで:



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