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落葉松ものがたり3 カラマツ材の魅力と可能性


林業の大きな目的は木材の生産です。カラマツ林業も、カラマツ材に特別な価値を見出した人々の情熱によって始められました。

じっさいに落葉松が最初に造林されたとき、人々はその成長の早さに注目していました。最も初期の造林は防風林が目的で、木材としても丸太としての利用が主でした。明治時代には朝鮮人参の栽培施設の支柱のために苗を育て植林をしたという記録があります。この場合だと直径は5cmくらい、樹齢も10数年程度が目標だったと思われます。

その後の時代でも、造林されたカラマツは、強度と腐りにくい性質を活かして丸太として使うことが主な目的でした。代表的な使い方はビルの基礎杭、炭鉱の坑道支柱、土木工事のための土留材、そして電柱でした。

基礎杭と電柱はいまではコンクリートが使われるようになり、炭鉱は閉山され、土木用材としての用途は細丸太が基本なので、いまのカラマツは大きくなり過ぎたと言われています。

建築用では、長い間ヤニとネジレの問題があり、乾燥と脱脂について様々な技術を開発して解決を目指してきました。これらの技術は、カラマツの欠点を補い他の木と同じように使えるようにする、という観点で開発されてきました。合板や集成材は、カラマツの強度を活かし欠点を補う使い方として、現在カラマツの主要な使い方になっています。

一方で、カラマツならではの特徴を活かした使い方も広まりつつあります。例えば住宅の外壁材。耐水性と硬さで、アメリカ産のレッドシダーに代わる材として利用が進んでいます。

なんと行ってもカラマツの特徴は木目です。これは春〜夏に出来た早材と呼ばれる、色の薄い部分と、秋冬の成長が遅い時期に出来た、晩材とよばれる色の濃い部分の、色の違いが際立っていることから生まれる、カラマツならではの個性です。

針葉樹としては強度のあるカラマツは、ふつう広葉樹しか使われない用途にも使えます。しかし加工にはスギ・ヒノキとは違った工夫が必要です。

カラマツの外壁(林友ハウス工業 karamatsu T&Tパネル)

(写真)カラマツの外壁(林友ハウス工業 karamatsu T&Tパネル) 

カラマツは種から苗を育てるので、同じ山で育ったカラマツでもかなり性質が異なる場合もあります。長年にわたり用材として優れた性質の系統を選別してきたとはいえ、スギやヒノキのようなはっきりした品種までは確立していません。また、土壌の性質や斜面の方向など育った環境によってもかなり材質が異なることが、加工現場では問題になっています。

ふるい造林地では高齢大径のカラマツが育ち、製材品の用途が広がっていくなかで、カラマツ材の特質を活かすための製材や加工方法も工夫されてきました。最近注目されているのは、木の芯をはずした構造材や、柾目材の利用です。節の無い柾目板は、高級家具や木工品、窓枠など住宅の内装材にも使われ始めています。このためには製品の2倍以上の太さの材が必要になります。

(写真)柾目板の仕上げ

日本最初の林学博士である本田静六は明治31年の著書「造林学各論」で『本邦針葉樹用材トシテ船艦用材トシテ亜米利加産ノ「オレゴンパイン」に代用シ得ルモノハ単に此 からまつ ノミ』と書いています。欧州カラマツはチークやマホガニーとならんでいまでもヨットの建造に使われています。造船用材には無節の大径直材が必須ですが、その後120年、日本では造船材目的でカラマツを育てたという例は聴いたことがありません。

一部の人工林カラマツでは、60年を超えると芯に腐れが入るなど、材質が劣化することが問題になっています。長い年月をかけて大径材を育てるための方法を確立する必要があります。

スギやヒノキの育成と活用は日本の歴史と同じくらいの歴史がありますが、カラマツについては、林業も木材利用も、まだまだ発展途上と言っても良いでしょう。

(写真)高齢カラマツの製材  

95年カラマツの製材端材。樹皮と白太と赤身の柾目、何に使いましょう?


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