• 原 薫

林業会社の酒造り




 日本は古事記に詠われているように「豊芦原の瑞穂の国」。その瑞穂を育む水は、源流にある美しい山々から生み出されます。酒造りに欠かせない「米」と「水」。酒名『山瑞』という名前には「米もそれを育む水も山の恵みである」というメッセージが込められています。


米づくりは田んぼを作ることで治水も担い、瑞穂は日本の美しい里山の景観の中心を担ってきました。私たち日本人は山のエネルギーの凝縮した米を食べ、発酵という微生物との共創によって酒をつくり、国造りをしてきました。日本人はずっとずっとそんな神の象徴である自然を「山」と呼び、山と戯れてきたのですね。


 私たちが目指す林業は「山と戯れること」にあります。明治以降の近代化と価値観の欧米化の中で、山は「神さまのおられる聖域」から「木材生産のための場所」に変わり人間側の一方的な管理下に置かれます。


結果、「山」は私たちが生きるために必要なすべてを授けてくれる命の源であることを忘れ、また、御柱に見てとれるように「木」は神の依り代にもなる存在であるにもかかわらず、明治以降の近代林業においては木を工業製品のような扱いにし、山を工場のような生産の場にしてしまいました。


 なぜ林業会社が米をつくり酒を仕込むのか。私はこれまで様々な場でお話をさせていただきましたが、ご賛同いただいた方々は工業生産的な近代林業ではなく、「山と戯れる」林業の話に共感してくださいました。


そして、「私に何ができる?何をすればいい?」と。とてもうれしかったです。ですが、そのたびに歯がゆい思いもしました。なぜなら、これまでの林業においては「商品は丸太しかなかった」からです。丸太を買えるのは材木を扱う業者だけです。


だからずっと、共感していただいた方々の想いを具体的に実現できる商品やサービス、取り組みを考えてきました。『ソマミチ』の活動もその一つであり、おかげさまで共感の輪は広がりました。


ヤマト牧場周辺の里山や『美鈴湖もりの国キャンプ場』も私たちが伝えたいことを表現する場になりつつあります。その流れの先にできたのが『山瑞』です。



《山と人とが生かし生かされる豊かな暮らしの創造》を理念として掲げてきた柳沢林業、渾身のお酒です。私たちの想いを汲んでくださった杜氏さんも手間をかけて低温でじっくり丁寧に醸してくださいました。香り、味、体にしみわたる感覚、全身で「山」を感じてみてください。これが山岳都市松本の本当の豊かさです。






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